月山和紙
なんて自由。
まるで、こどもの落書きみたい。
色とりどりの線が、和紙の中で踊っている。
色付きの和紙が入って、
こっちは、ちょっと真面目。
不思議な和紙を訪ね、
山形県西村山郡西川町大井沢へ。
月山和紙 大井沢工房さんぽのあるじ、
三浦一之さん。
秋田生まれで、小学生からは埼玉。
サラリーマン時代に紙漉きに興味を持ち、全国の産地を見学し、
紙漉きの町、埼玉県比企郡小川町で修業。
平成5年に大井沢へ。
自然と匠の伝承館の和紙工房から独立し、今の工房へ移ったそうだ。
紙漉きの様子を見せてもらった。
天井には竹が固定され、
竹と漉き桁(けた)が、ひもで結ばれている。
楮(こうぞ)の紙料液を、
漉き桁(すきげた)にすくい、
縦横に振って定着させる。
竹簀(たけす)を持ち上げ、定着したものを
1枚1枚重ねていく。
たぷたぷたぷ。
ちゃぷちゃぷちゃぷ。
工房には、ずっと水の音がしている。
水は紙漉きに、なくてはならない。
ここでは、朝日連峰山系から湧き出す
簡易水道を使っている。
「水を動かすことが大事。
水を動かすことで、紙の繊維がからみあって
1枚の紙になる」と三浦さん。
この紙には、織物の残糸(ざんし)が
使われている。
この後、圧力をかけ、水分を抜く。
さらに、1枚1枚を乾燥させ、
ようやく、1枚の和紙が完成する。
楮。
三浦さんは地元のもの、国産のものを使っている。
産地によって違いがあるそうだ。
これは、山葡萄の木の皮。
たたいて、やわらかくして、紙漉きに使う。
「楮より荒っぽい繊維になる」という。
山葡萄の木の皮の
繊維を、あえて残したもの。
昔は何件かあった紙漉きが、
今は2軒しかない。
シナの木の繊維。
「地域の特徴が出る」と、三浦さんは
さまざまな物を、紙に漉き込む。
楮の繊維を、荒く残したもの。
和紙を切って、再び紙に漉く。
漉った紙の上に、水を落とした。
イヌタデも漉き込んだ。
紅花。
白き紙を漉いて、その上に
染色した楮を流し込んだもの。
いろの掛け算、
広がりは無限大。
近所のこけし工人、志田菊宏さんが
絵付けした、うちわ。
霊峰・月山と、朝日連峰に挟まれた大井沢。
冬の積雪は2mを超える、厳しい自然環境が
土地の豊かさと、工人たちの技術を守っている。