わらびの一本漬け
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日本一のわらび生産量を誇る
山形県西置賜郡小国町。
町内には、観光わらび園がいくつもある。
ここは20町歩(20ヘクタール)という広大な山。
戦時中は軍馬の干し草を生産していたという。
このわらび園の山焼きに
参加させていただくことになった。
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5月初旬のこの日は暑すぎず、ほぼ無風。
山焼きには「出来すぎ」という好条件なのだそうだ。
風が強いと、火はどこに行くかわからず、
勢いも増し、作業は難航してしまう。
今日の火は地表をゆっくり焼いていく。
そして取り残すこともない。
「こんなやりやすい山焼き、今まであっただろうか」
山焼きリーダーの川崎さんが話してくれた。
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進め方は、まず山の上側を燃やし
燃やす範囲を形づくる。
それから山の下側を燃やす。
先に下側から燃やすとと、火に勢いがつき、
燃え広がりすぎて危ないからだ。
レーキ(巨大なフォークのような農機具)で燃えた草を
火がついたまま横に引っ張って火を広げていく。
燃えすぎた部分にはジェットシューター
(背負える水タンク)で水をかけながら、作業が続く。
同じ年に、何箇所も山焼きを行う兵(つわもの)もいるそうだ。
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近くに寄るとさすがに怖い、熱い。
パチパチと草が燃える。
意外にも、匂いはない。
たまに火の竜巻のような火柱が上がる。
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![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/06/MG_7391-1540x1027.jpg)
白っぽい茅(かや)の部分に差し掛かると
火の勢いが増す。
山焼きは手間も時間もかかるが、
山を焼くことによって、これから生えてくるわらびが見つけやすくなる。
また灰の成分が土によく、
山焼きをしたわらびと、そうでないわらびには、
きちんと違いが出るから、欠かすことができない作業だ。
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![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/06/MG_7039-1540x1027.jpg)
![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/06/A3A6278a-1540x1027.jpg)
3週間後。
あんなに全てを焼き尽くしたのに
もう緑が一面に広がっている。
見渡す限り、わらびがびっしり。
通年は大体2週間ぐらいで生えているのだが、
今年は雪が少なく、その影響もあって
少し遅れたそうだが、とにかく
わらび、わらび、わらび。
![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/05/A3A6306-1540x1027.jpg)
山焼きで土の表面は焼けても、
わらびの地下根に影響はない。
わらびはシダの仲間。
葉が開く前の若芽を収穫して食べる。
地下根から取れるデンプンはワラビ粉と言われ
大変な貴重品だ。
![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/05/A3A6260-1540x1027.jpg)
スッと伸びた、わらび。
付近には山のアスパラと呼ばれる
「しおで」も生えている。
![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/05/A3A6244-1027x1540.jpg)
![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/06/A3A6298-1540x1027.jpg)
空に向かって葉を開いた、わらびたち。
残念ながら食べられないが
その姿と量は圧巻で美しい。
わらび取りは6月いっぱい楽しめる。
実際わらびを取ってみた。
わらびが「こっちよ、あたしを取って!」
「そっちじゃないの。こっちよ!」みたいな感じで
呼んでいる、
忙しくて楽しい、
無になれる。
![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/05/A3A6356-1540x1027.jpg)
ジャーン!
ひとりで3時間。こんなに取ってしまった。
リュックやビニール袋じゃ、間に合わない。
わらび取りには風呂敷がとっても便利だとわかった!
わらびはそのままでは食べられないので
重曹(または木灰)を使って
アク抜きをする。
![わらびの一本漬け](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2024/05/MG_7408-1540x1027.jpg)
アク抜きしたわらびを醤油につけて
わらびの一本漬けが完成。
醤油がよくしみて、ぬるめ気(ぬるぬるした食感)が
あって、うまいんだなー。これが。
シャキ、シャキ食感も残ってる。
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わらびのアク抜き(須貝家のやり方)
わらびはアク抜きしてから食べる。アク抜きには昔からの木灰を使ったり、重曹を使う方法がある。重曹は量が多いと柔らかくなり、少ないと苦味が残る。お湯が冷めるまで半日(12時間)ほど、そのままにし、冷めるときにアクが抜ける。ほかに塩漬けする方法もある。
⚫️材料
・わらび 2Kg
・重曹 小さじ6(約30g)
・塩 大さじ2(塩の量は個人の好みで増減してもok)
・水 3.6リットル
⚫️下準備
穂先がついているものは穂先を包丁で切ったり、手で取り除く。
⚫️やり方
1.沸騰した水に重曹と塩を入れ火を止める。
2.そこにわらびを入れ、下の方が真っ青になったら箸で上下を返し、そのまま冷めるまで置く。その際、わらびが水から出ないようにする(出てしまうと色が黒くなる)。3.完全に冷めたら(半日12時間くらい)、液を半分捨てる。さらに、捨てた液の2倍の量の新しい水を足し、冷蔵庫に保存する。3の液につけておくと、3日ほどは良い状態を保つ。食べる時はそこから取り出し、よく洗って食べる。
⚫️食べ方
おひたしとして食べる。辛子を添えたり、酢醤油や(麺つゆなどに酢を加える)や生姜を添えた醤油でも。ほかに味噌汁や、山菜汁などに。
⚫️他のアク抜きのやり方
重曹編
わらびを大きな容器に入れる。そこに重曹(注ぐ熱湯の量の1割ほど)をふりかける。熱湯をわらびがかくれるほどたっぷり注ぐ。しっかり冷めるまで半日おく。その後、液を完全に捨て、新しい水と取り替え3~4時間置いたら食べられる。
木灰編
わらびを銅鍋に並べ、木灰を一面に振る。上から熱湯をそそぐ。量はわらびに被るくらい。落とし蓋をして一晩おく。翌日水洗いして水につけておく(早く食べたいなら、熱湯にくぐらせて、水にさらす)。
⚫️保存方法
山菜の重さの4割の塩で漬ける。食べる際は塩抜きして使う。
わらびの一本漬け
わらびを好みの醤油液に入れたもの。冷蔵庫に入れておけば1ヶ月くらい保存が可能。食べきれない時は冷凍してもOK。それぞれの家庭の好みで辛味を足してもよい。一本漬けわらびは上から食べるのと、下から食べるのでは味が違うという説も・・・。
⚫️材料
・アク抜きしたわらび 500g
・だし醤油 130cc
・みりん 40cc
醤油とみりんの量は変えてもOK
・好みで辛味
須貝家では麹とだし醤油、青唐辛子を長時間漬け込んだ「辛味たれ」を小さじ2ほど入れる。
⚫️つくり方
1.アク抜きしたわらびを洗う。根元の硬いところは切り捨てる。
2.チャック付きビニール袋や容器に、調味料を入れる。そこに1のわらびを入れて冷蔵庫で保存する。
3.たまに天地をひっくり返す。調味料の分量が少なくてもわらびから水分が出てくる。半日ぐらいから味がしみて食べられる。
教えてくれた人/ (山焼き)
山焼きを先導し、わらび園を共同管理するリーダー・川崎均さん(大工・写真中央)、今秀夫さん(会社員・写真左)、そして今回、山焼きを案内してくれた須貝憲二さん(元大工・写真右)。先祖たちから受け継がれてきた山を、今も手入れを行い、大切に守り続けている。
教えてくれた人/(アク抜き、一本漬け)
須貝千賀子さん
小国町叶水生まれ。山焼きを案内してくれた憲二さんと結婚。宿屋がない叶水で、商人や遠方からの客を宿泊させてきた須貝家。千賀子さんは宿泊客を山菜料理などでもてなしてきた。庭には花がいっぱい。手芸も上級者。
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