かてごと帖

炭焼き

炭焼き

「一輪挿しにすっと、かっこいいべ」
竹炭をくれた東沢炭焼き保存会の方が
教えてくれたので
竹炭に庭の草花を飾ってみる。

炭焼き

竹炭を重ねて、
グルグル巻きにして花留めに。
秋の野原で色づいた植物を飾る。
木も花もきれい。

炭もきれい。

炭焼き

2022年の秋、
ある炭焼き窯が最後の仕事を終えた。

山形県山形市東沢地区。
今は行われていないが、
この辺りは昔、炭焼きを生業としていた。

途絶えてしまいそうな、この地の炭焼き技術を
継承しようと、昭和六十年に愛好会として活動が始まり、後に「東沢炭焼き保存会」が発足。
三十七年間、炭を焼いてきたけれど、
炭焼き窯はそれ以前から使用しており、約五十年が経っている。
窯の老朽化はどうにもならなくて、
これが最後の炭焼きになる。
幸運にもそこに参加させていただいたので、記録しておく。

炭焼き

炭焼きは窯の中に原木(炭材)を
入れることから始まる。

原木を奥の方から隙間なく詰めていき
燃えやすい枝などに火をつけ、

薪を燃やし、窯の温度を上げていく。
温度が上がったら

窯の入口を赤土に水を混ぜて
粘土状にしたもので塞ぐ。

炭焼き

炭とは木を炭化させたもの。
木は普通に燃やすと、灰になってしまうが
酸素が少ない状態で不完全燃焼させると、
木炭(もくたん)となる。

炭材は300度近くになると、
空気がなくても自ら熱分解し、
その熱で炭化が進んでいく。
焚き口を塞いだ窯の内部は
800度から1000度ぐらいまで温度が上がる。

炭焼き

原木が窯の中で黄金色になっている。
焼きあがったようだ。

粘土や石を外して窯の入口を開ける。
いよいよ炭出し。

炭焼き

ずん。

一気に熱波が来る。
覚悟をして待っていたのに、びっくりする熱さだ。

道具の角を使い、長い炭が壊れないように掻き出す。

炭焼き
炭焼き

窯の中が熱い。
柄の長い道具を使い、さらに炭を移動させる。
高温の中、ずっと作業を続ける。
熱い。

炭焼き
炭焼き

掻き出した炭の上に、
水で濡らした消し炭(小さくなった炭)をかぶせ
消火する。

炭焼き

完全に炭が冷えたら、ふるいにかけ、炭を取り出す。

木の伐りだしから始まる炭焼き。
東沢での炭焼きシーズンは、
農作業が落ち着く十一月から。
木の成長は冬になると止まるそうで、
そのあたりからがいい。
雪がたくさん降る翌年の一月まで続く。

それから三月くらいまで東沢地区では
伊豆大島へ炭焼きの出稼ぎに行っていたそうだ。
帰りのお土産は、安価だった椿油。
家族に一斗缶で買って帰り、椿油で天ぷらを揚げたり、荒れた手に塗ったりしたそうだ。

炭焼き

白炭ができた。

炭には白炭と黒炭があり、窯の中から赤熱(せきねつ)の炭を取り出して、
消し炭で消化したのが白炭。
黒炭は窯全体の口を塞いで
温度を下げ、消化したもの。

白炭で有名なのが、
ウバメガシでつくった和歌山の備長炭。

白炭と黒炭の他に、竹でつくった竹炭があり、
竹炭は燃料というより、
消臭や水の浄化などに使われている。

炭焼き

炭を出した窯がまだ熱いうちに(取り出し後の1時間ぐらい後がベスト)
次の原木を入れる。

原木を入れるのが30分遅くなっただけで火の付きが遅くなり、
炭の出来上がりも遅くなるから
熱くても作業を行わなければならない。
入り口に焼き付け用の薪(雑木)を置き、
火を付ける。

窯の内部から出る煙が一気に90度近くになったら、入り口の薪を取り出し
再び、石と赤土の粘土(ネバ)で入り口を塞ぐ

炭焼き

炭の材料となるのは、この辺りで自生したナラ。
ナラは硬い木で、硬いよい炭になる。

木を切った際に株を残しておけば、
ヒコバエが出て木が生える。
伸びたら再び切って、また炭にしてきたんだね。

木にカンと呼ばれる道具を込ち、引きずって山を下る。

炭焼き

炭火料理は,弱いくらいでじっくりじっくり焼く。
遠赤外線効果で外側はパリッと、中はしっとり。
炭火で焼いた焼き鳥はとてもおいしかった。

炭は燃やしても煙がでない。
そして形のあるうちは、何度燃やしても燃える。
つまりエネルギーとして自在に使うことが出来、
燃料として、すごく優秀。

炭焼き

炭焼きは煙の色の見極め、釜の中の温度管理が
とても難しい。
一度体験して、その難しさがわかった。
時代とともになくなりつつある
炭焼きを体験できたのはうれしかった。
生活に必要なエネルギーを
身近なものからつくっていた
昔の人の技術は自分が体験したからこそ、
すごいと思った。

炭焼き

東沢炭焼き保存会の皆さん
愉快な人生の大先輩!

山の中でのたくさんの美味しいおもてなし
ありがとうございました。

炭焼き

東沢コミュニティセンターのセンター長で、
保存会会員でもある横山さんに看板が渡された。
またいつか、
この看板を掲げて体験会ができたらいいな。

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炭焼き

森林に覆われ、炭焼きに適していた日本。ほとんどの地域で炭がつくられ、生活燃料として使われていたが、昭和30年代初頭をピークに減少。近年は再生可能なリサイクル素材として注目され、遠赤外線効果を活かしての料理や、生活空間での脱臭などに使われている。

⚫️材料
ナラの木

木を伐採する道具

炭出しの道具

⚫️つくり方

1.ナラの原木を切る。長さ110㎝で揃え、太いもの(約直径10㎝以上のもの)は、カケヤをハンマーで打ち込んで割る。

2.炭焼き窯にナラの木を入れる(※木酢液は生木からでないと良い物は取れない)。
まず、原木を束ねたものを3束入れ、煙の通り道を確保する。(窯は全体の炭化を効率的に行うよう、煙道口が窯の下に付いている)

その後、刺又の様な道具で原木を立てていく。手前に来るにつれて、立てにくくなるので、置きたい場所の天井を目掛け、投げ入れる。

窯は2、3回、火を入れることでの温度が上げやすくなる。初回~2、3回目の窯焼きでは、まだ窯の中の温度が低く、よい炭をつくるのは難しい。


3.原木を窯に入れ終わったら、炊き口に焼き付けの焚(た)き木を置く。バーナーで火をつけて燃やす。燃やし続け、煙の温度が一気に85度から90度になるまで燃やし続ける(竹炭をドラム缶でつくる場合は120度になるまで燃やし続ける)。


4.焚き口の木を取り除く。赤土に水を混ぜて粘土状にし、焚き口を石と粘土で閉じる。
閉じる際、窯内部の変化が見えるよう、焚き口部分上にのぞき穴と下に空気穴をつくる。

5.窯の上の煙が出る穴を、筒を使って大きさを変え、煙の量をコントロールする。
ここで使っている3本の筒は33mm、30mm、25mmと大きさが微妙に違う。火力を上げたい場合はサイズの大きい筒を使い、火力を抑えたいなら小さいものを使う。


煙の色が黄白(カライ)の状態をキープすることで、木酢液が取れる。煙が出るところに煙突の様なものを差し込むと煙が冷えて液状になる。それが木酢液。主な成分は酢酸で農作業時に使われる。
20時間ほどこのままにしておく。




6.翌日木酢液が出ていなかったら炭はほぼ完成。
まだ出ていたら、炭はできていない。
それから精錬(炭を堅くする)する。精錬とは窯に空気を送り、窯の温度を上げて仕上げをすること。これが炭の質を決める重要な行程で、煙や中の状態を見ながら煙の出る穴の大きさをコントロールして行う。
煙が黄白(カライ)から白煙(クド)になった頃から始める。窯の中は炎が見え始める。
煙が青白になれば、少々強く精錬してもよい。煙が青煙になれば窯の中は赤くなり、炭の形も見えてくる。煙がなくなる頃には、窯の中は黄金色になり、炎が立って硬い炭となっていく。
煙の量が半分くらいになると、煙の出口より火が出る。この状態を「クドヌケタ」という。

7.焚き口を開けて炭を取り出す。

8.水に濡らした消し炭で、燃えてる炭を消火する。

教えてくれた人/ 佐藤好美さん
東沢炭焼き保存会会長。中・高校生ぐらいから、山で家族の炭焼きの手伝いを始める。その経験から保存会の会長を勤める。父と兄は伊豆大島に炭焼きに行っていた。朝、窯に来ていい炭ができていると嬉しさを感じる。普段は野菜をたくさんつくっている。

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