もってのほか
山形の秋の味として欠かすことのできない、
もってのほか。
私たちは「もって菊」と呼んだりもする。
エディブルフラワーという、おしゃれな呼び方がされるずっと前から食べている。
延命楽(えんめいらく)という品種らしい。
「天皇の御紋である菊の花を食べるとは、もってのほか」だとか、「もってのほか(思っていたよりもずっと)おいしい」ということから、
「もってのほか」と呼ばれるように。
赤や黄の花で、晩秋を楽しませてくれる菊。
眺めてきれいなだけじゃなく、食べれるなんて。
しかも独特の風味があって、味もいい。
ここ、よーく見てね。
花びらがストロー状になっているの。
これがシャシャキ食感の秘密。
食べるのは、菊の花びら。
子どものころ、花びらをむしる手伝いをしたな。
これもきれいでしょ。
花びらをさっと茹で、和え物、おひたし、酢の物に。
そのまま、天ぷらや吸い物などに使ってもいい。
花の中央、芯に近い部分は、
苦味があるので使わないでね。
きれいな色を残すため、茹でる際は酢を入れて
湯がき、水にさわす(水に入れる)。
歯ざわりを楽しためるよう、茹ですぎないで。
火が通ると鮮やかな色に変わり、うつわの中で映えるんだよね。
ほらね。
シャキシャキしたお浸しは、
もりもり食べれちゃう。
こちらは菊なめこ。
黄色い菊もいいでしょ?
緑とのコントラストもいい。
パッと明るい色だから、ハレの日用の料理にも。
今回料理を教えてくれた佐藤さんは、
菊を冷凍保存して、お正月料理に使うのだそう。
水の中でほうれん草と混ぜて
ぎゅっと水分をしぼって、お浸しに。
これだけでも立派なおもてなし料理になる。
じいちゃん、ばあちゃんたちは、
ちょっとした広さの畑があれば、
もって菊を育てている。
霜の降りるまで食べることができる菊。
しかも、「早生」 より
「晩生」の方が甘みが増すのだ。
野菜が乏しくなる冬期には、
貴重な食べ物だったんだよね。
作り方を見る作り方を閉じる
菊のお浸し
菊の料理法といえば、お浸し。手軽で菊の香りと食感を感じることができる。散らした菊の花びらは茹でる際に酢を加え、軽くさっと茹でることで、歯ざわりも色もよくなる。菊は泥がついているようなら、よく洗ってから使う。
1.花びらを摘み、バラバラにする。
2.沸騰したお湯の中に、酢(1リットルの水に対して)大さじ1ぐらいを入れ、花びらを加える。箸でかき混ぜ、再度沸騰させる。花びらに透明感が出たら、水にさらして冷まし、ザルに取って水気を切る。
菊のなめこ合え
秋のおいしいもの同士の取り合わせ。味が薄い菊花と、煎(い)り付けることにより、ねばり気が増しておいしくなるなめこと合わせた。
⚫️材料 つくりやすい分量
・菊(お浸し) 60g
・なめこ 80g
・だししょうゆ 大さじ1
・酢 お好みで
⚫️つくり方
1.洗ったなめこに、だししょうゆを加えてから、鍋で煮る。焦がさないように煎(い)り付ける。
2.1を冷ます。
3.ゆでた菊を加えて、和える。
4.お好みによっては酢を加えてもおいしい。酢は酸味がキツくないものがよい。
菊の巻きもの
きゅうりを海苔に、菊を酢飯にみたて、のり巻きのようにつくる。ハレの日やおもてなし料理などの小鉢として活躍してくれる一品。サランラップは皿に移してから外す。
⚫️材料 つくりやすい分量
・菊(お浸しにしたもの)120g
・きゅうり 2~3本
・ホタテ貝柱 2個
・カニカマ 4~5本
・合わせ酢(三杯酢)大さじ2
・だししょうゆ少々 ※合わせ酢とだししょうゆは、お好みで食べるときに回しかける
⚫️つくり方
1.きゅうりを薄い輪切りにする。ホタテは縦に3等分に切る。
2.きゅうりに塩をまぶしてもみ、水分が出てきたら絞る。
3.巻きすの上に、ラップを敷き2をおく。
4.3の上に、水気を絞った菊を乗せる。
5.ホタテをだししょうゆで味を付けてる。4.の上にホタテ、カニカマをおき、巻きすで巻く。
6.巻いたものを、サランラップの上から厚さ2㎝くらいに切る。サランラップは皿に盛り合わせてから外す。合わせ酢を添えてすすめる。
教えてくれた人 / 佐藤道子さん
長井市生まれ、結婚して上山市へ。子どものころから料理が大好き。保育士として働いた後、「地元の料理を喜んで食べて欲しい」と楢下宿のばあちゃんずクラブ代表となる。かてごと帖では干し柿や納豆炙り餅などでレシピを提供している。
作り方を見る作り方を閉じる