すげ笠
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8620-1540x1027.jpg)
ひゅ~ん、風が吹き抜けていった。
ここは山形県西置賜郡飯豊町中津川地区
8月上旬の菅(すげ)畑。
これが畑?
ただの草でしょ?
そう思う方もいるでしょう。
すげ笠を知らなかったら
私もただの雑草に見えてたな。
中津川地区では江戸時代から
すげを育て、すげを使った
笠やござがつくられてきた。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8604-1540x1027.jpg)
山などに自生しているすげ。
ここでは田んぼの一部をすげ田にし、育てている。
「すげ」はカヤツリグサ科。
すげは茅葺屋根の材料とは違う。
ベストな刈り時期は、土用の丑の頃から。
この辺りのおばあちゃんたちは、
すげの固さが絶妙な時期に、タイミングを見計らって刈り取っている。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8572-1540x1027.jpg)
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8701-1540x1027.jpg)
代々営まれてきた、すげ笠づくりだが高齢化が進み、
つくり手が少なくなっている。
中津川地区は約6ヶ月間、雪に覆われる。
雪の量は3メートルに。
仕事のない冬の時期、男性は竹などで笠骨をつくり、
女性はその笠骨にすげを縫い付けて、
笠をつくってきた。
写真は山形県の祭り、花笠祭り用の笠だ。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8654-1540x1027.jpg)
神奈川から移住してきた「こしゃる」の葉月さん。
この辺りのおばあちゃんたちから
すげ笠づくりを教わり
数少ないすげ笠のつくり手になっている。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8746-1540x1027.jpg)
自由な糸の動きが魅力的な葉月さんの笠。
2本の針を同時に動かすことで、文様を描いている。
2本の針を使うのは、すげ笠づくりに魅せられた
葉月さん独自のテクニック。
「すげ笠は編むのではなく、針で草を縫うよう」と
葉月さんは言う。
他の草を使ったものは織ったり、
編んだりするのだと。
糸で縫いつけるというのは
「すげ笠」だけではないかと。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8759-1540x1027.jpg)
これは先ほどの古い写真のお嫁さん
ヨシおばあちゃんのつくった笠。
頂点の花結びも美しい。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8693-1540x1027.jpg)
1本のすげは、茎が三角形になっていて、
太い部分と細い部分がある。
用途に合わせて使い分ける。
外側の太いものを笠の表側に
内側の細めのところは、笠の内側(ツツガラミ)に。
さらに細い部分は山菜を縛ったり
ゴザをつくったり。
全て無駄なく使える。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8804-1540x1027.jpg)
こんな風に。
最も細い部分を使って結んだ、笹巻き。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_8665-1540x1027.jpg)
仕分けたすげを、竹のヘラで裂いていく。
昔の人は必要な道具は、何でも自分でつくっていたんだよなぁ。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_9347-1540x1027.jpg)
いよいよ笠づくり。
笠骨に内側(ツツガラミ)用のすげを巻いていく。
笠づくりには笠骨が必要なのだが、
今、つくれる人はごくわずか。
真ん中のカラフルなのは、すずらんテープ。
昔は植物の赤麻(あかそ)を使っていたが、
時代を経て、すずらんテープが今の定番に。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_9422-1540x1027.jpg)
ツツガラミを進める。
横に横にと、しっかりとすげを巻く。
濡らしたすげは乾くと縮むので、
なるべく隙間を少なく、
ひたすら、すげを笠骨に巻いていく。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_9490-1540x1027.jpg)
ツツガラミができたら、次は表側。
笠の表にヨシを使ってすげを留めていく。
ヨシはこの辺で取れたものを
おばあちゃんに分けてもらったそう。
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_9648-1540x1027.jpg)
![すげ笠](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2023/09/MG_9525-1540x1027.jpg)
糸で縫っていく。
ひと針ひと針を丁寧に。
この針は、葉月さんのお父さんが
自転車のスポークからつくったもの。
長くて弾力があって、使いやすそう。
ちなみに、おばあさんたちは
コウモリ笠の骨などから、
つくってもらったんだって。
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すげ笠
江戸時代、米沢藩の上杉鷹山が推奨したという中津川のすげ笠。材料となるすげの栽培から収穫、製作が行われており、花笠踊りで無くてなならない花笠として、今もつくり続けられている。中津川では自分用の笠として、自作している方がいる。
⚫️材料
・菅(すげ) よく乾燥させたもの
・ヨシ(又はひごや竹)弾力があって折れにくいもの
●道具
ハサミ、針、霧吹き、糸(今回は刺子用糸)
⚫️つくり方
1、すげを刈り、なるべく早く、重ならないように干す。
(1日目はアスファルトの上でもOK)
風で飛ばないように広げ、鉄パイプなどで重しをする。そのままだと管理が大変なので、取り込む時に、ある程度束ねる。刈り取り後のすげは、水に濡れると赤茶っぽくなるので、雨や夜露にあてないようにする。夕方には取り込む。
2、2日目は束ねたものを扇のように広げ、草などの上に干す。(朝露に濡れないよう、草が乾いてから干す)
すげは乾燥すると白くなる。色がムラにならないよう、扇型に広げて干す。天候を見ながら、2~3日同じ工程を繰り返して完全に乾燥させる。乾燥が足りなかったら、さらに干す。先端までは白くならないので、根本が白くなればOK。干しすぎると焼けて赤っぽくなる。すげの乾燥は夏の間に終え、その後の保管は湿気の無いところに吊るしておく。
3、笠をつくる前に、すげを選別する(3つに分ける)。
内側(ツツガラミ)に使うのは細めのもの。
笠の表には一番太いものを。そのほかの最も細いものと、3つに分ける。
4、すげを裂く。
内側(ツツガラミ)に使う、細めのすげ(葉はV字型になっている)を2つに裂く。
外側用の太いすげ(これも葉がV字型)は、根本5センチほどはそのままにし、上部を2つに裂く。
これらの作業は、竹ヘラのような道具を使って行う。
すげのつるっとした面が表(写真左)、ざらっとした方が裏。
すげ笠は外側も内側(ツツガラミ)も、人の目のつくところ全てに、すげの表がくるようにする。
5、笠骨中央の部分に、ツツガラミ用のすげを巻く。巻き初めはすげの裏を見えるようにして巻くと、内側(ツツガラミ)部分では、すげの表が出る。
作業中、すげは霧吹きで湿らせておく。乾きそうになったら湿らせる。1ヶ所を留めてから、巻き方は「骨3本分進んだら1本戻る」を繰り返し、まず1周する。2周目は骨1本分ずらして、同じことを繰り返す(始めたところに戻ってきたら、また3本目のところに進む)。
すげの先は割れやすいので、カットして新しいすげをつなぐ。
つなぎ方は、カットした古いすげの下に新しいすげを滑り込ませてから、縦の笠骨ごと巻き込む。
2周したら、笠骨の円の輪になった部分を巻いていく。
6、笠骨を表にする。頂点の円と同じくらいの大きさの紙を用意する。立体にしたいので2ヶ所くらいに切り込みを入れておく。 紙は米袋や包装紙など、何でもよい。
紙をすげで固定する(適当で可)。固定できたら横へ横へとすげを巻いていく。すげは内側(ツツガラミ)から見ると表が見えるようにする。
同じ作業を繰り返す。最後の3㎝くらい(手に持つ部分のため、耐久性が増すようにする)をすずらんテープや麻紐に変え、同じ作業を行う。
すげや麻紐の最後の止め方/すげや麻紐を縦骨に巻いてから、一段上に裏から出す。笠骨にきゅっと寄せるときっちり留まる。
内側(ツツガラミ)が完成。
7、笠の外側をつくる。まずヨシを糸で、笠骨につける。
外側用のすげを、ヨシではさむように固定する。裂く時につなげておいた部分で笠骨をぐるっと巻き込みながら、それをヨシと糸で留める。
1ヶ所、固定した裏側。
2つ目以降のすげの固定は、裏のすげを横に倒してから、糸で固定する。
ヨシが足りなくなったら、新しいものを重ねて糸で固定し、つなげていく。
1周したら、最初の立ってるすげを寝かせ、糸で止める。
8、すげを下から、笠の淵に沿って縫っていく。ここからは縫い目が見える。糸の終わりは玉結びをして固定する。次の糸で縫い始める。
全てのすげを1針1針、少量すくって縫っていく。上に行くにつれてすげが重なってくる。邪魔な部分はカットして減らしながら縫っていく。
笠の上部は本数の減ったすげで、花結びなどを。
その上に、さらしを縫い付けて保護をする。
教えてくれた人/ 舩渡川葉月さん
環境保護・伝統工芸の継承などのNPO職員として働いた後、神奈川から移住。
中津川での暮らしと笠づくりなどを学び、「こしゃる」として農村体験などを
受け入れている。飯豊町の雪室を活用した「雪室熟成珈琲」も販売している。
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