笹巻き その1
古い葉の上に、新しい笹の葉が出てきた。
梅雨に入ると、
若い笹の葉は、雨水をどんどん吸い上げ、
ぐんっと伸びる。
「山へ行って、笹を採ってくる」と
父さんが出かけると、
ばあちゃんは「もち米、あったかな」と
笹巻きづくりの準備を始める。
うちのばあちゃんがつくる笹巻き。
三角形の笹巻き。
父さんは、ばあちゃんの笹巻きが大好きだ。
「父さん、笹巻きって、いろんな結び方があるんだって」
「ふーん。そうか。」
笹巻きをつくるのは、
笹が大きくなった旧暦の端午の節句あたり。
地域ごとに違いがあって、
山形県内には5種類くらいの巻き方がある。
「昔はね、田植えって今より遅かったの。
田植えして、疲れて疲れて。
次は田の草取りもしなくちゃならない。
その合い間の休みが、さなぶりだったの。
笹巻きつくって、みんなで食べた記憶があるな」
これは、ばあちゃんの話。
笹巻きは保存がきく。
笹の葉が乾燥してくるけれど
殺菌作用があって、4~5日は大丈夫。
おいしいし、保存食としてもかなり優秀だね。
ばあちゃんがつくった、今年の笹巻きだよ。
笹は採ってきたら、軽く洗ってゆでておく。
今は、業務用スーパーなどでも手に入る。
もち米は一晩水につけておく。
笹巻きを結ぶ、いぐさも、昔は野辺で手に入れた。
今は、産直や八百屋さんで買ったものを、
ゆでて、やわらかくして使う。
みんなでたくさんつくった。
今回の先生役・安房タカ子さんの家では、
たくさんつくって学童保育にプレゼントするそうだ。
ぐつぐつぐつ。
笹巻きはふたをして、1時間くらいゆでる。
いぐさの中央を固く結んでおく。
そこへ長めの竹や棒を入れて、吊り上げる。
なるほどー。
これなら、やけどしないで持ち上げられる。
水分を切っておけば、日持ちがいい。
もち米の粒感が、ちゃんと残って、
おいしそう。
安房さん家の定番は、
すりごま+砂糖。
もちろん、きなこもおいしい。
黒砂糖を使うと濃い味に。
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笹巻き(三角巻き)
笹の葉の殺菌作用を利用した保存食。もち米にほんのり、笹の香りが残る。
●材料(つくりやすい分量 40~50個分)
もち米5合
笹の葉50枚(1個に2枚使用)
いぐさ25本くらい(八百屋さん、産直などで購入可能)
●つくり方
1.山から採ってきた笹の葉を洗い、いぐさと一緒にサッとゆで、水にさらす(殺菌作用があり、かたさが取れて扱いやすくなる)。笹といぐさは使う前に、水切りする。※冷凍していた笹の葉は、熱湯に漬けてもどす。
2.洗ったもち米を、一晩水につける。つくる1時間前くらいに水切りする。
3.1枚の笹の葉を円すい状に丸め、大きなスプーンでもち米を入れる。(量は笹の葉の大きさに合わせて加減するが、もち米は調理で膨れるので少なめにする)
4.もう1枚の笹の葉は、ふたをするように折りかぶせ、余った両端は後ろへ。かたちを三角形にする。
5.いぐさの端を、笹巻きの中央に置く。いぐさの長い方を使い、三角形の角のひとつを上から下に巻き、次の角を上から下に巻き、残りの角を上から下に巻き、縛る(中央を通るとき、指で押さえる)。※動画あり。
6.1本のいぐさの、両端に1個づつ笹巻きをつくる。
7.大鍋に水を入れ、6を入れて1時間ほど火にかけ、その後、引き上げて熱をさます。
教えてくれた人/安房タカ子さん
米沢市窪田生まれ、近くの高畠町山崎へ嫁ぎ、3世代8人分の食事をつくってきた。笹巻きを100個ほどをつくって、孫が通う学童へ差し入れしたところ「見たことない」「どうやって食べるの?」と、よろこばれ、それがうれしかったとのこと。
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