みそ餅
山形県の南部、広大な田園が広がる川西町。
県内有数の米どころである、この町は
冬期は寒さが厳しく、積雪量も多い。
春を待つ2月25日でも1メートル以上の
雪が残っている。
今日は東沢地区で行われる、
みそ餅づくりのワークショップに参加するんだっ。
ここ東沢地区は中山間地域。
世帯数は少ないけれど、
農作物の生産に秀でた人が多く、
まとまりが良い地区なのだとか。
「町内の人同士の交流の場を創りたい」と、
町の外郭団体・やまがた里の暮らし推進機構が、
この東沢地区で行った
「みそ餅づくり講座」。
募集を行うと、あっという間に
定員に達してしまったそうだ。
みそ餅とは、この辺りで食べられてきた冬のおやつ。
「むがしはおがしなんて何もながったがら
こればっかり食べでだもの」と、
参加者の方が話してくれた。
「肥散(こえち)らかし)」という農作業があり、
昔はソリを使って、畑や田に堆肥を運んだ。
「肥散らかし」は力を使う大変な重労働。
そこで、手軽に小腹を満たすため、
囲炉裏で焼いただけで食べられる
みそ餅が便利だった。
「普通の切り餅だと、味付けしないと食べられない。
みそ餅は味がついているので、焼いてすぐ、
手間をかけずに食べられる」と
講師の齋藤絹代さんが教えてくれた。
まず餅米をふかす。
絹代さんの蒸し缶(ふかしかん)は、
すごく丁寧な造り。
使い込まれていて、かっこいい。
今回使う餅米、ヒメノモチはコシが強い品種。
川西町内ではほかに、「こゆきもち」「わたぼうし」などの餅米も生産されている。
餅米が蒸れてきたら、
蓋を開けて蒸し具合を確認。
シャモジを差し入れ、
ジョリッとしなければ蒸し上がり。
(中まで、火が入っていればいいってこと!)
いよいよ餅つき機に投入。
今回講座で使ったのは、餅をつくだけの、
シンプルな機能のもの。
「昔ながらの餅つき機械が便利」と絹代さん。
参加者の多くの方が、餅つき機を持っているみたい。
さすがもち米の産地。
日ごろから餅をつく機会が多いのがわかる。
餅をつきながら、みそダレもつくっていく。
鍋を火にかけ、弱火で混ぜ合わせる。
混ざったら強火にしたり、中火にしたりして、
焦がさないように練る。
ちなみに、このみそは
川西産の紅大豆でつくったもの。
餅はざらざらしないか、味見して確認する。
まん丸もちが出来てきたら
みそダレを一気に投入。
機械はずっと動かしたままで、
ヘラで混ぜていく。
最初はこんなだけど
餅とみそが、どんどんなじんで
よく混ざったら
お好みの具材を入れ
さらに機械を回して、餅をつく。
意外な組み合わせが、
新しい世界に連れて行ってくれる。
これはピスタチオ、
さらに乾燥イチジクを入れてみた。
ほんのり甘いみその香りがして
とっても優しい味。
みそ餅と一緒にふるまわれた
絹代さんの「ナス干し」の煮物。
ナスも絹代さんが育てたもの。
大根は餅の消化を助けるからと
用意してくれた漬け物。
ニンニクとショウガがきいて、
サラダ油でなじませた新しい味。
「毎日同じだと、家族が食べないから」
と絹代さんは、青菜漬けを松前漬け風にアレンジ。
これも、とてもおいしかった。
ごちそうさまでした。
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みそ餅
山形県南部の置賜地方に伝わるみそ餅。つき上がった餅に、味噌と砂糖でつくったタレを入れ、さらにつきあげる。クルミや黒ごま、青豆などを加えたものもあり、冬から春までにつくられ、冬の郷土食として親しまれている。
⚫️材料
・餅米 1升(1、5Kg)
・みそ 250g
・砂糖 300g
・くるみ 100g
・白ごま 60g
アレンジで他にピスタチオやレーズン、乾燥イチジクなどを適量入れてもおいしい。
⚫️つくり方
1、餅米を研いだら、たっぷりの水に2時間以上浸す。
2、水気をきった餅米を蒸す(40分前後)。蒸し時間は餅米の分量に応じて加減をする。
3、2を餅つき機でつく。白餅で食べられる状態にまで、つく。
※餅つき機は餅をつくだけのシンプルな機能のものがおすすめ。米を蒸す機能がついたタイプは、味噌ダレが下の方に垂れるので、少しずつ入れて、つく。
4、餅をついている間に、みそ、砂糖を鍋に入れて火にかけ、焦げないようによく混ぜる。
5、4の熱々のみそダレを餅つき機に入れ、機械を動かし、餅と混ぜ合わせる。
6、みそが均等に混ざったら、くるみとごまを入れ、餅つき機を動かし、さらにつく。
7、餅がつきあがったら、ビニールを敷いた、箱やバットなど、平らな入れ物に流し入れる。固まったら、適当な大きさにカットしておく。
出来上がりをすぐ食べれば、ゆべしのようでおいしい。
教えてくれた人/齋藤絹代さん
山形県川西町東沢地区生まれ。「東沢婦人漬物研究会」を受け継ぎ、2008(平成20)年、仲間たちと「東沢夢工房」として地元の野菜を使った漬物を製造販売している。東沢地区の郷土料理の伝承にも取り組んでいる。
教えてくれた人/登坂賢治さん
川西町で農村と都市との交流事業、教育旅行事業、農業体験などの事業に取り組む、やまがた里の暮らし推進機構の理事長。「大人のインターンシップツアー」や、町の特産品である紅大豆を使った事業なども人気。
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