かてごと帖

柿渋染め

柿渋染め

山形の夏。暑い中、多くの作物が実りを進めている。

これは豆柿。
実が小さくて一般的な柿より渋みが強い。
熟れる前に収穫し、柿渋をつくる。

「柿渋」とは柿のタンニンを発酵させてつくる染料。
布だけでなく、木材も染められる。
そして高い防腐効果がある。
8月上旬の豆柿はタンニンが豊富で、良い柿渋ができる。

柿渋染め

山形県小国町。
みんなで豆柿を収穫し、
手分けして柿渋をつくる。

柿渋染め

目の前はユウオン峰。
土色の岩壁がかっこいい。
いい風が吹いてくる。

柿渋染め

子どもたちも遊びながら収穫に参加する。
いつか大人になったら、
この景色を思い出して欲しいな。

柿渋染め

柿を青いうちに採ってしまうのは
とっても貴重で、贅沢なこと。

手入れをしない柿の木は上に上に伸び、
高いところの実はカラスの餌になり、
熊などの被害にもあいやすい。
だから収穫して食べたり、
柿渋をつくるって、大事なことなんだ。

柿渋染め

kegoyaの熊谷茜さんは、小国町在住のかご作家。
地元の自然から材料を採取して
かごをつくっている。
柿渋は常時ストックしていて、
作品で使う紐などを染めている。
かごに直接塗っても防腐作用があり
長く使えるようになるそうだ。

柿渋染め

収穫した豆柿の色はアップルグリーン。
つややかに光って、とても美しい。

柿渋染め

タンニンがたくさん出るよう、
小さめに切る。

柿渋染め

一人でやると大変だけど
みんなでおしゃべりしながら作業すると
早く終わるんだよね。

柿渋染め

切った豆柿を水にひたし、蓋をする。
これを熟成させる。

柿渋染め

こっちは以前につくった柿渋。
直射日光に当たらないよう、
酒瓶に保存しているそう。

柿渋染め

熟成してから1年近く経った柿渋を
水で2倍に薄め、

柿渋染め

染める。

柿渋染め

ぴかーんと晴れた夏の日は、絶好の柿渋日和。

柿渋染めは太陽によって色が定着するので
「太陽染め」とも呼ばれている。
最初は淡い色なんだけれど、
毎日外へ出して、太陽の光を浴びさせると
色が濃くなってくる。

柿渋染め

これは柿渋の原液をハケで塗って、
濃いめの仕上げ。

柿渋染め

このバッグは「液に浸して、太陽に当てる」を
何度も繰り返した。
太陽の光に当てることで、色が深くなる。

古くから受け継がれてきた柿渋染め。
火を使わず、
媒染や色止めがいらないから、
手軽にできる。
素材や染め方を工夫することで、表情の違いを楽しむことができる。

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柿渋染め

昔は家庭でも柿渋をつくる習慣があった。仕込みをするのは柿が青い8月ごろ。つくって1年ぐらいから使えるが、2~3年経った物の方が、濃く染めることができる。仕込み時や染めるときは、タンニンが反応するので、銀製の指輪などは外すこと。

⚫️材料

・豆柿、または渋柿(8月上旬に収穫できる青いもの)。量が多いほどたくさんできる。
・水(できれば水道水でないもの、井戸水や川の水などの薬品を含んでいないもの)。
・長時間保存するためのかめ、木の樽、バケツ。

⚫️つくり方

1.収穫した柿を小さく切る(タンニンがたくさん出るようブレンダーで細かくしたり、杵と臼ですりつぶしても良い)。
※柿の液は手に着くと、樹脂のようにカピカピになり、その後黒くなるので、ビニール手袋をつけるのをおすすめします。
※包丁は鉄製だと錆びるので、ステンレス製を。使い終わったら柿渋の成分が固まってしまうので、とにかく丁寧に洗いましょう。

2.バケツに柿を入れ、水をひたひたになるまで入れる。蓋をして冷暗所で1年ほどそのままに。たまにかき混ぜると、カビが生えにくくなる(忘れても大丈夫!)。
*仕込み具合を確認できるよう、別の柿で仕込んだもので観察しました。

仕込んだ直後

2日後

2週間後

1ヶ月後

約1年後

3.1年ほど経ったら、上の硬い部分を剥がして柿渋を取り出す(その際、ザルや布であまり余計な物が入らないようにこす。こした布も柿渋で染まる)。

4.柿渋だけを瓶に入れて保存する。2~3年そのままにしておいても良い。量はだいぶ減る。

5.柿渋で染めるときは、瓶やカメから柿渋を出すときにさらにザルや布でこすと良い。

6.染める服や布はあらかじめ濡らし、繊維を水で満たしておく。

7.柿渋に水を適量入れる。

8.布を柿渋に浸し、その後、絞る。

9.太陽の光に当てて乾かす。柿渋は太陽光で定着する。最初はうっすらしか色がつかなくても、翌日、翌々日と太陽光に当てていると、段々と濃くなる。薄めた柿渋はとっておいて、何度も使える。「柿渋液に浸し、太陽の光に当てて干す」を何度も繰り返して濃い色にすることができる。洗濯して液を落とすと、色の変化は止まる。

 

 

教えてくれた人/野崎奈都子さん、熊谷茜さん、高橋安以子さん(写真左から)

小国町に移住してきた3人は、移住してきたばかりの頃、山の達人にこの地に伝わる知恵を、いろいろ教わったそう。「それをゆるく若い人たちに伝えるのが私たちの使命」と話してくれた。左の2人は柿渋で染めたのを身につけて来てくれた。

野崎奈都子さん/野菜や米の栽培のほか、パンや食糧加工品・自然素材のかごつくりなどを行っている。かなりの料理上手。

熊谷茜さん/くるみやあけびのつる、ガマの葉などの自然素材を収穫して、かごなどの生活用品を制作販売している。

高橋安以子さん/森林の多さに注目し小国町に移住。木質ストーブとペレットの仕事を行っている。柿渋などの染め物の上級者。

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