かてごと帖

ハシギの煮あい

ハシギの煮あい

ざるいっぱいの葉っぱ、なーんだ?

山形に遅い春がやってきて、
次から次へと山菜が芽吹く。
すると、みんな急に忙しくなる。
4月中旬~5月上旬、山形県上山市でも
忙しい春がはじまる。

 

ハシギの煮あい

これは「ハシギ」。
「なんまいば」と呼ぶところもある。

昔、細い枝を箸として使っていたから、
ハシギなのだそうだ。
ハシギの若芽を摘んだものが、

ハシギの煮あい

こうなる。

一瞬の山の味を、ずっと食べることができる。

ハシギの煮あい

ハシギとはミツバウツギという植物。
山に採りに行ったり、畑の隅に植えたりしている。

ハシギの煮あい

食用になるのは、萌え出たばかりの
若芽や花芽の部分だ。
白い花が咲き、若芽にも上品な香りがある。

ハシギの煮あい

一つ一つ摘むのは大変だから、
枝を折ってきて、ザーッと手で「こぐ」。

ハシギの煮あい

たくさん採れたら、
摘みたてをすぐにゆでる。

ハシギの煮あい

ゆで上がったら、水にとって冷ます。

ハシギの煮あい

水気を絞ったら、ハシギのお浸しの出来上がり。
からし醤油で食べてもおいしい。

ハシギの煮あい

水気を絞ったハシギ。
重ならないよう広げて

 

ハシギの煮あい

干す。

 

ハシギの煮あい

しっかり干して、キドさ(アク)を抜く。

天気が良ければ1日でできるけれど、
曇れば、次の日もハシギを広げて
乾燥させなければならない。
ハシギづくりは、実はひと仕事。
これを1日でやれるのは
「段取りのいい人」なんだって。

ハシギの煮あい

乾燥させたものが、これ。
直売所などで売られている。

 

 

ハシギの煮あい

ぬるま湯に浸け、煮てもどしてから、調理する。

 

ハシギの煮あい

いろんな具を加えて煮ると

ハシギの煮あい

ハシギの煮あいの完成。

かつて、お葬式などを隣近所で行っていた頃、
料理として出されていたのがハシギの煮あい。
ハシギはそれぞれの家から、持ち寄った。

「いつも家にあるもの。
手に入りやすいのがハシギだったんでしょう。
冬に食べたりもするけれど、行事食として、
乾燥ハシギはつくっておかねば
ならないもののひとつでした」
佐藤さんは、そう教えてくれた。

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ハシギの煮あい

山形の冬に食べられるハシギ。煮物にして、行事食としてもよく食べられていた。独特の香り、少しの酸味があり、乾燥されることで、うま味が増す。

⚫️材料(作りやすい分量、分量表示ないものは適量で)

・ハシギを干したもの 50g
・油揚げ
・糸こんにゃく
・ごぼう
・にんじん
(お好みで他に野菜を加えても)

・醤油 大さじ1
・比内地鶏スープ(ほかのだしスープでも可)大さじ2
・旨み調味料
・サラダ油
・水 300cc

⚫️つくり方

1、干したハシギを水で2度くらい洗った後、ぬるま湯でもどし、しっとりしたら、ざるにとる。

2、ハシギとたっぷりの水を圧力鍋に入れ、強火で煮る。蒸気が出たら弱火にし、ピンが上がったら火を止め、圧力が抜けるまで待つ。(圧力鍋がない場合は水を入れて1~2分沸騰させて冷まし、さらに1~2分沸騰させ、鍋のハシギが手でさわれるくらいまで冷ます)。


3、ざるに取り、水に入れる。

4、他の具材を切る。
ゴボウはささがきして水につけておく。ニンジンもささがき、油揚げは短冊切り、糸こんも細かく切る。糸こんはざっとした茹でて、匂いをとる。

5、鍋にサラダ油を入れて、ごぼう、にんじんを炒める。ハシギの水分を絞ってから加える。その後、糸こんも入れる。

6、油揚げを入れる。

7、水と比内地鶏スープと、醤油を入れて
10分煮る。

8、旨み調味料と醤油で味を整える。

9、水分が飛ぶまで煮れば完成。

教えてくれた人/佐藤道子さん

長井市生まれ、上山市在住。楢下宿のばあちゃんずクラブ代表。地元の旬の食材を使った季節の郷土料理グループとして活動している。拠点にしているのは旅籠だったという古民家「大黒屋」。囲炉裏が残っている。納豆あぶり餅を食べるには予約が必要。

 

 

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