削り花(けずりばな)
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/DSF2610-1540x1155.jpg)
くるくる、くるくる。
くるくる、くるくる。
いくつもいくつも、重ねて重ねて。
コシアブラの木をうすく削ってつくる削り花。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/DSF2645-1540x1155.jpg)
山形の雪の時期にだけ咲く
削り花。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/MG_6330-1540x1027.jpg)
山形県米沢市の南部、笹野地区に向かう。
あたりはまっ白。
朝もやに包まれている。
山も道も、家も庭も。空も風も、空気まで、
何もかもがまっ白になる山形の冬。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/MG_6347-1540x1027.jpg)
朝日がのぼってきた。
幻想的な景色。
朝の除雪作業や、雪道での車の渋滞。スリップ事故。
雪に、恨み事を言いたくなる日もあるけれど、
こんな美しい景色が見れる日もある。
神様からのごほうび!
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/DSF2681-1540x1155.jpg)
笹野地区で受け継がれる伝統工芸、
笹野一刀彫(ささのいっとうぼり)。
鋭い眼光と、くるりと巻いた美しい羽。
これが鷹をかたどった、おたかぽっぽ。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/53C0550-1540x1027.jpg)
「ぽっぽ」はアイヌ語で玩具の意味。
1200年前、坂ノ上田村麻呂が戦勝祈願に
笹野一刀彫を奉納したと伝わっている。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/MG_6354-1540x1028.jpg)
削り花は花のない、色のない季節
神棚や仏壇におそなえされてきた。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/MG_6427-1540x1027.jpg)
かつて百人いた笹野一刀彫の工人。それが二十人ほどになっていた。
「このままでは笹野一刀彫が無くなってしまう。何とかしたい」と
笹野民芸館を遊び場にしていた、双子の佐藤和寛さんと佐藤和憲さん、
幼馴染で同級生の小山泰弘さんの3人は一念発起。
大ベテランの高橋清雄さんに弟子入りを志願した。
十五の伝統の形を教えてもらい、干支十二支を彫れるようになった3人は、晴れて笹野一刀彫の工人に。
高橋清雄さんが「おたか三兄弟」と名付けてくれた。
おたか三兄弟の佐藤和憲さん(左)と小山泰弘さん。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/MG_6372-1540x1027.jpg)
笹野一刀彫の道具。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/MG_6391-1540x1027.jpg)
笹野一刀彫はサルキリ一本でつくられる。
左から材料のコシアブラ、
サルキリ、チヂレ(小刀)。
コシアブラは木が水分を吸い上げなくなる
紅葉時に自分たちで山に入って調達する。
乾燥させるのに1ヵ月を要する。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/MG_6407-1540x1027.jpg)
削り花にはこの、チヂレを使う。
スー、スー。
一枚一枚薄く削ると
くるくるくるっと巻きあがっていく。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/53C0474-1540x1027.jpg)
コシアブラの木に、水分がほどよく残った
鮮度のいい状態でないと、このカールができない。
鮮度がよくないと、怪我もしやすいのだそうだ。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/53C0470-1540x1027.jpg)
スー、スー。
神経をつかう繊細な作業。
細く長く、一削り一削り・・・・・・。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/MG_6415-1540x1027.jpg)
それが重なって、ようやくひとつの花になる。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/53C0488-1540x1027.jpg)
サルキリで最後の仕上げ。
めしべをつくって、切断。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/53C0521-1540x1027.jpg)
花びらを起こしていく。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/53C0536-1540x1027.jpg)
笹野花の完成。
![削り花(けずりばな)](https://kategoto.com/wp-content/uploads/2022/02/DSF2662-1540x1155.jpg)
ツゲの木。これも高山から採取してきたもの。
そのツゲに花を4つ、つぼみを1つ付け、
削り花になる。
年末年始や一月十七日の笹野観音のお祭りに飾られてきた、この花。
かつて雪国の室内は、窓が少なくガラス窓もなかった。しかも囲炉裏のススで薄暗く、
今よりずっと色彩が少なかったはず。
素朴な佇まいの削り花が、
米沢の長い冬を楽しませてきたのだと思う。