かてごと帖

くるみ寒天

くるみ寒天

長井市にある、農家レストランなごみ庵に着くと、
菅野ちゑさんはくるみを炒っていた。
農業用ハウスを利用した作業場。
植木鉢を台座にしたガスコンロに
使い込んだフライパンが乗っている。

中にはくるみ。
ピカピカひかって、湯気と煙を上げている。

ジュジュー、ガイロガイロ。
焼けて、くるみの殻同士があたって、独特の音がする。
殻が乾いて、口が開きそうになったものは次の工程へ。

くるみ寒天

菅野さんは
子どもの頃の思い出が楽しくて、
昔のものを集めてしまう。

なんでも手作りし、火を使うのも得意。
煙で味付けするのも好きで、
いぶし大根もおいしくつくる。

奥に見えるのは、自作のピザ窯。

くるみ寒天

蓑や魚刺し。これもコレクションの一部。

くるみ寒天

くるみは川原や山から拾ってくるのだが、
木の下の草を刈ったりして、
日ごろから手入れをしておく。

くるみ寒天
くるみ寒天

くるみは秋になって熟すと、
ぽとりぽとりと地面に落ちる。
昔は稲刈りのころ、川から流れて来たそうだ。

くるみ寒天

くるみの木の下には、
こんな感じのものがいっぱい落ちている。

食べるには、まず鬼ぐるみの表皮を腐らせる。
土中に埋めたり、土の上にそのままにしておいたり、
やり方は人それぞれ。
表皮が腐ったものをよく洗って乾燥させ、
保存しておく。

くるみの殻を一晩、水に入れ、
フライパンで乾煎り(からいり)する。
火を入れると表面が茶色から白っぽくなり、
乾いてくる。

くるみ寒天

炒った後のくるみ。

くるみ寒天

炒ったくるみは、機械で割って

くるみ寒天

いよいよ中身を取り出す。

 

くるみは食べるまで、手がかかる。
菅野さんも、かつては使う度に殻を割っていたそうだが、今は中身を出し、冷凍保存している。

上杉藩が飢饉に備え、調理法や食べ方を記した
冊子「かてもの」にもくるみは記載されている。

くるみ寒天

寒天液に、黒糖を入れて火にかける。

くるみ寒天

これが重箱に流してつくった、くるみ寒天。
菅野さんが言う通り、くるみはあっさりしたのと、油っこいのがある。黒砂糖のシンプルな味付けが、香ばしいくるみを引き立ている。

手のかかるくるみ寒天は、もてなし料理でもある。
盆、正月、法事などにふるまわれるけれど「もどってくる(み)」ということで、結婚式には出さなかったんだって。

くるみ寒天
くるみ寒天

菅野さんのもう一品。

菅野さんがお嫁に来た頃から
お姑さんがつくってくれた
きゅうりの煮物。

汁を多くすると味噌汁になる。

くるみ寒天

サラダなどの生食のイメージが強い、きゅうりだけど、
火を通すと、ウリのような食感になる。
味噌との相性もよくって、体にしみる。

くるみ寒天

フウチョウソウの花。
なごみ庵はいつも季節の花が出迎えてくれる。

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くるみ寒天

特別な席の一品にも、お茶受けにもなるメニュー。くるみはそのままでもよいし、すり鉢ですったり、包丁で刻んでもよい。夏場は白砂糖に置き換え、醤油を加えてみては?

⚫️材料
・くるみ 好きな量
・棒寒天 1本
・水 350cc
・黒砂糖 150g
・塩 ひとつまみ

⚫️つくり方
1.棒寒天をちぎって水につけ、2時間ほどふやかす。

2.ふやけてきたら絞ってから、細かくちぎり、水に入れる。

3.弱火にかけ、ゆっくりと寒天を溶かす。

4.寒天が溶け、透き通るようになったら、黒砂糖を入れる。

5.黒砂糖が完全に溶けたら、ひとつまみの塩を入れ、沸騰させる。流し入れる容器を水でぬらしてから、鍋の中身をザルで濾しながら入れる。

6.くるみを上に敷き詰める。粗熱をとってから冷蔵庫へ入れて冷やし、固まったら切り分ける。

きゅうりの煮物

この料理には畑で大きく育ってしまったきゅうりがよい。きゅうりは種を取らずに煮ると、うま味がでる。じゃがいもとよく合う。少しの油を入れると、よりおいしくなる。

⚫️材料(4人分)
・きゅうり(大きくなったもの)4~5本
・じゃがいも(大きなもの)2個
・水 適量
・味噌 小さじ1~好みの量
・和風だしの素 適量
・油 少々

⚫️つくり方

1.きゅうりの皮を大雑把にむく。

2.鍋に水と和風だしの素を入れ、食べやすい大きさに切ったきょうりを入れ、火にかける。

3.きゅうりが透き通ってきたら、皮を剥いて大きめに切ったじゃがいもを入れる。

4.じゃがいもが煮えたら弱火にし、好みの濃さになるまで味噌を入れる。

5.油を少し垂らして完成。

教えてくれた人/菅野ちゑさん
白鷹町から長井市の専業農家に嫁ぎ、稲作や養豚、しいたけ栽培などを経験。いろんな地域の方と交流を持ちたいとグリーンツーリズムを始める。自家でつくる米と野菜、地元食材で食事を提供する「農家れすとらん なごみ庵」を営んでいる。

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